iPad導入と、これが何物なのかということ

 iPad64GB Wifi版をAppleStoreで予約し、予定通り発売日に届いた。
 総じて、購入前に予想していた通りのルック&フィール。ノートPCを持ち歩いている人ならば使い道は十分あると思う。その反面、出先におけるノートPCの使い道が思い浮かばない人は、「何に使うの? 携帯で良いじゃん」という事になりそうだ。
 個人的には2〜3日の旅行ならばノートPCは不要になり、荷物がかなり減らせるのがポイント。

本体

  • 出来る事と出来ないことは、ほぼiPhoneと同等。ただし、画面のサイズと処理速度の向上から、フィーリングはかなり上々、そして快適。iPhoneOSが気に入っているなら、ネガティブな感想にはならないだろう。
  • グリップし辛い事もあって、移動中の使用には適さない。移動中はiPhoneを使い、腰を落ち着けた時にiPadを使うような運用になりそう。
  • 画面の指紋&光の写り込みは、相応にある。アンチグレアシートで改善するようだが、とりあえず何も貼らないで使う事にする。トレシー必須。
  • バッテリの持ちは、3〜4時間の間、省電力を気にせず使っても十分残っていた。日帰りなら特にバッテリの心配は無さそうだ。
  • ソフトウェアキーボードは、まずまず及第点。打鍵時のフィードバックが無いのでタッチタイプはほぼ無理だが、2本or4本でポチポチ打ったり、両手で握り込んでの親指タイプなら一般的なモバイル端末より快適に入力できる。IMの変換効率は相変わらず酷い。せめて入力中に辞書登録できれば良いのだが…。
  • Bluetooth経由でキーボードを繋げれば、かなり快適に入力できる。カーソル移動や範囲選択&カット&ペーストもキーボードから入力可能。TABキーも効く。ただし、文節の切り返しが出来ないのが難点。もっとも、これはキー入力と言うよりIMの問題か。
通信
  • 通信の頻度はiPhoneほど高くないので、SBMの3G定額の料金は割高に感じる。iPhone併用でiPadの3G版を買うなら、プリペイドの方で良さそうだ。
  • b-mobileWifi(300kbps制限)と併用すると、TwitterやWebのブラウジングぐらいならば、無制限のSBM3G通信とそれほど大きな差は感じない。反面、ストリーミングはほとんど使い物にならない。もっとも、iPhoneでもストリーミングは快適とはとても言えないので、できる事はほとんど変わらない。
  • ケースは紆余曲折があったが、結局純正ケースを使用。着けると結構地味な外見になるので、出先で使っていて目立たないというメリットがある(笑
電子書籍

  • iBookiPadの機器縛りとのことなので、とりあえず様子見中。
  • Kindleは専用端末よりレスポンスが良いし、何よりカラー表示なので、リファレンスや雑誌系は使いやすい。ただし長時間の読書はやはり眼精疲労的にeInkの専用端末に軍配が上がるか。
  • 自前でスキャンしたPDFファイル(主にコミックと楽譜)はCloudReaderで問題なく表示できる。類似のものにGoodReaderもあるが、CloudReaderの方がサイズの大きなPDFファイルを表示するときの安定性および速度に勝る。
  • 話題のi文庫HDは使いやすいけれど、サイズの大きなPDFの表示は不安定。青空文庫の表示は素晴らしい。
アプリ
  • iPhoneアプリのうち文字中心の物は拡大時に文字のジャギーが気になって厳しい。文字のスムージングが改善されれば、かなり印象が変わりそうだが…。
  • ゲーム類に代表されるグラフィック中心の物は、以外とジャギーは気にならない。エスプガルーダIIなどは弾が見やすくなって快適。
  • iPadに最適化されたアプリはさすがに綺麗&快適。ただし、まだiPhoneのIFを小変更した程度のアプリが多く、iPadの大画面&処理速度を使い切れていない印象。ビジネスチャンスがあるか?
  • 特にTwitterクライアントはまだ決定版と言える物は見当たらない。個人的にはTLやリストの更新を参照しながらTweet入力出来るような物を期待している。

何物か

 で、これがパーソナルコンピュータとしての発展形か、と言われると個人的には違うと思う。JobsにAlan Kayが語ったとされている通り、様々な言語で自由に表現が出来ないモノはパーソナルコンピュータとは言えないのではないか。
 では、何物なのだろう。きっと、これは白物家電であり、インターネットそれも特にクラウド環境のブラウザなのだ。コンピューティングの知識やトレーニング無しで使えるし、Appleの想定通りに使えばトラブルも少ない。使っているうちに、動作が極端に遅くなったり、ハングアップして再起動する必要に迫られる事も(まあ多少の誇張を敢えてすれば)ほとんど無い。パーソナルコンピュータのような半製品ではないのだ。
 つまり、ついにPCはインターネットやクラウドも他に持って行かれてしまった、という事だろう。世界的に見ると、かつて'90年代中頃にPC業界はかなり苦しい局面に立たされていた。オフィスへのPC進出が一段落し、それまでの「何でも出来る箱」というのが虚構だと言うことが一般に広がってしまった頃のことだ*1。その窮地を救ったのがインターネット、特にWWWだった。おそらくインターネットの普及があと数年遅れていたら、あの時点で撤退・倒産していたPCメーカはかなりの数に上っただろう。
 そしてそれから20年経った今、まだPC業界の中心はインターネットだ。そして、多くのメーカはiPadを見て、バラし、それを模倣するだろう。ただ、それ単品をモノとして見ている限り、そして、それをPCの延長として見る限り、iPadには決して至れない。
 いくつのメーカはその変化に適応出来るかもしれない。しかし、その時、果たしてPCは一般市場向けの商品として生き残っていられるだろうか。

*1:国内市場はNECのPC98シリーズからIBM互換機への移行という大きなイベントがあったので少し事情は違う。